保坂展人トークライブレポートその2

さて、前回の記事の続きです。

引き続き、児童ポルノ法改定問題に関する話題が続きます。


至極当然のことですが、山口貴士弁護士は「性的虐待、性犯罪は当然禁止すべき。」

「児童の自己決定権を侵害する撮影も規制すべき」と言いました。

また、現行法では、性的自己決定権に関する論点がないという問題点も指摘しました。


伊東乾氏は、ネットでの性的いじめについて言及し、

海外サーバだとどういうことになるのかという話も取り上げられました。

ネットにアップすることは現行法でも摘発できる*1のではないかという話題になりました。


保坂氏が、「サンタフェ問題の結論を出すべき。このままではあらゆるものが

児童ポルノになってしまう」と警鐘を鳴らすと、山口弁護士が

ナイフ規制でカキ用ナイフが規制されたことについて言及しました。



保坂氏は、児童ポルノ法改定案の審議で参考人として出席した前田雅英氏が

共謀罪の推進派でもあることをあげて、単純所持規制が共謀罪につながることを指摘。


子供の人権問題として、クラスター爆弾や地雷に鈍感な国がなぜ規制するのかと疑問を呈し、

(シーファー前大使が)なぜ国内法について言うのか疑問であると言いました。



マンガやアニメなどの創作物規制の問題に移ります。


山口弁護士から次のような話が出ました。

創作物規制憲法違反だ。青少年条例の有害図書制度は18歳未満に売らないという制度だから

合憲という判例が出ている。

風潮を口実に規制すれば何でもできる。

多数派には表現の自由はいらない。マイノリティのために表現の自由が保護されている

みんなが嫌がるものにこそ表現の自由を与えるべき。

時代によって価値観が違うことは自明だ。

「国民」とは、過去も未来も含む抽象的な日本国民を指す言葉だと

山口弁護士の話が続きました。

東京都青少年問題協議会についても言及

ここで、「東京都がうごめいている」と、東京都青少年問題協議会についての

3人の方が立ち上がり、答申素案の内容について言及がありました。

その3人はコンテンツ文化研究会かAMIの関係者の方でしょうか。

有害情報の定義の拡大、不健全図書指定の強化、

児童を性の対象として取り扱うメディアを根絶する機運を作ろうという、

青少年問題協議会答申素案について簡単に説明しました。


根絶する機運を作っていこうというのは、価値観を押しつけるものであり、

自治体がやろうというのはおかしい、

フィクションには名宛人がいない。

と山口弁護士は語りました。



そして、保坂氏からは次のような発言が出ました。

内心の自由に敏感に反応する人は10年で半減した。

その人もまた、「児童ポルノ」で思考停止してしまうという。

ジャーナリストや弁護士までもが児童ポルノ法に対しての発言がないという。

ゆえに、山口弁護士は通ってしまう前に社会的議論を起こしたいと語る。


児童ポルノ法改定は、オタクしか反対勢力がいないのに、

なかなか成立しない。先ほどの3人の方のような方がロビー活動をしてるからだと

山口弁護士は語る。彼らが国会議員や都議会議員に働きかけているそうです。

曰く、どういう所に届けるかが重要とのことです。


そして、児童ポルノの件数に関しては、警察も法務省も調査していない、

海外の公的機関の統計についても山口弁護士は知らないと話していました。

そもそも、何が児童ポルノかということ自体が曖昧だというわけです。


アメリカは自国でできないから圧力をかける

グアンタナモでテロ容疑者を取り調べしたり、麻薬取締のためにパナマや南米に

派兵したりするように、アメリカは自国でできないことを外でやる傾向が

あると、山口弁護士は語っています。

すなわち、アメリカ国内でマンガを摘発するのはリスキーだから。

供給源である日本に圧力をかけているのだそうです。

また、実在児童よりも子ども像のほうが大事に思われているのだという指摘もありました。

死刑制度については、死刑論はイデオロギー論争になりがちだが、今の死刑制度はどうか、

反権力と死刑反対論は関係ないと山口弁護士は語っていました。


ここで、日本ユニセフ協会の元広報部長、森田明彦氏が登場。

一応そういう立場の方が来るのはいいことかもしれませんが、

なんとなく微妙なところもあるように思います。

しかし、規制派寄りの立場の人から「保守派が児ポ法を利用した」という

趣旨の発言が出たのは意外だと感じられました。

児ポ法」という略称は、ネットスラングだとばかりに思っていたもので…


まとめ

さて、まとめに入ります。

裁判員制度、死刑問題に関しては、死刑存廃両方の立場から、

裁判員制度での死刑は全会一致にすべきではないかと提言がなされました。


児童ポルノ法に関しては、児童ポルノ法が内心の自由表現の自由

アリの一穴にならないように議論を深めるべきだとまとめられました。


なお、保坂氏は自身のブログで、

児童ポルノ禁止法を議論してみて、いかに「児童ポルノ禁止法」という法律名が思考停止を生んでいるかを再認識した。政治の世界では「嫌われたくない」「レッテルを貼られた少数派になりたくない」という総主流派意識というものがある。
児童ポルノ禁止法改正」なら中身を知らなくても、「あれこれ反対するのはおかしい」という意識を持ちやすい。そこに乗じて、捜査権限を拡大し「児童ポルノ」のみならず、その周辺に存在するものに幅広く網をかけていこうという意図が入り込みやすい。山口貴士弁護士がそのあたりを解説してくれた。

http://blog.goo.ne.jp/hosakanobuto/e/1c56fc286b1b880fcc40b88ac8a3fa70

とまとめています。

その通り、「児童ポルノを禁止する」と言えば、誰でも賛成してしまうに

決まっているでしょう。だから問題点がおろそかになりやすい。

問題点を知っている人は少数派ながら、結構いるのですから

どうやって他の人々に広めていくかが今後のカギになっていくのではないかと思いました。


感想

さて、感想に入ります。



内容は非常に面白く、ためになる内容だったと思います。

1000円プラス飲食代は高くはなかったと思います。

強いて期待外れだと感じたことをあげると、意外なことに山口弁護士が

都条例などの問題に思ったほど言及しなかったことだと感じました。



メディア関係者の中に関心がある方がいるようで朝日新聞の編集者の一人が

このライブに参加していました。

欲を言えば、記事を書く権限がある人にこそ来ていただきたかったのですが…

大手ではないマイナー雑誌の記者でもいいから来て記事にしてほしいぐらいです。


トークライブが終了すると会場に来ていた方が名刺交換をしていました。

山口弁護士も、森田氏も、ロビイストの三人の方も、朝日の編集者の方も

名刺を交換したりちょっとした雑談をしたりしていました。


山口弁護士に終わった後に質問したいことがあったので質問しようとしましたが、

お忙しいからなのか、満足に答えていただけませんでした。

ロビイストの三人の方に話をしようとしましたが、できずじまいでました。


しかし、保坂氏に挨拶に行ったら保坂氏から握手を求められました。

もちろん、私は「がんばってください」と激励の声をかけました。


とにかく、皆様本当にお疲れ様でした。

*1:確かに現行法でも摘発できるが、海外サーバだと捜査が困難になる