人権侵害救済法案の骨子まとまる。そして、ジレンマも…

委員は国会同意人事 人権救済機関の基本方針発表 権限強化の余地も


 江田五月法相は2日の記者会見で、人権侵害の被害者救済を図る新たな人権機関設置の基本方針を法務省政務三役名で発表した。人権侵害の有無を調査する「人権委員会」は法務省の外局とし、委員長と委員は国会同意人事にする。民主党政権は基本方針を軸に年内の人権救済法案作成を目指す。

 基本方針は、人権委員会について「国民の人権擁護に関する施策を総合的に推進し、政府に対して国内の人権状況に関する意見を提出することなどを任務とする」と規定した。

 その上で、政府からの独立性を保つため、公正取引委員会国家公安委員会などと同様、独自の規則制定権を持つ「三条委員会」として設置する。

 都道府県では、人権擁護事務を担っている法務局や地方法務局などが窓口となる。都道府県の人権擁護委員地方参政権を有する者から選ぶ方針を示し、永住外国人地方参政権が付与されれば外国人も有資格者になる。

 一方、人権侵害の調査に関しては「任意調査に一本化し、調査拒否に対する過料などの制裁規定は置かない」とした。救済措置についても「調停・仲裁を広く利用可能とし、訴訟参加、差し止め請求訴訟の提起は当面導入しない」と定めた。報道機関の活動に対しても「自主的取り組みに期待し、特段の規定を設けない」とした。

 ただ、基本方針は「制度発足後5年の実績を踏まえて必要な見直しをする」ともしており、今後の政治情勢によっては人権委員会の権限が強化される余地を残した。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110802/plc11080210120014-n1.htm

こっちの表現の自由を脅かしかねない法案も動きだしました。

人権侵害救済法案の基本方針についてまとまりました。

人権委員会については、「地方参政権を有する者」から選ぶなどとなっています。

「令状なしに家宅捜索や押収を行う事ができる」という反対論の論拠となっている立ち入り調査に関しては、

任意調査に一本化することになっています。

年内の作成を目指すとなっており、そんなに急ではないのがせめてもの救いです。


もちろん、反対派がこれで納得するとは到底思えません。

怒りはますます高まるばかりでしょう。

むしろ、当初の案では人権委員会内閣府の外局であったものが法務省の外局になったことから、

自民党時代の人権擁護法案のうち、人権委員会法務省の外局にあることを問題視していた人の不興を新たに買うのは必至です。

右派ばかりでなく、左派からも反対の動きが強まると考えられますので、

定義拡大解釈…何が人権侵害か 人権救済機関の骨格公表


 法務省政務三役名で2日明らかにされた人権救済機関の基本方針は、これまで指摘されてきた制度への根本的な疑義を払拭できる内容ではなかった。報道への規制や調査拒否への過料などは「ない」としたが将来どうなるかはわからない。「人権侵害」のレッテルを貼られ、糾弾の末に社会的に葬られる「人権侵害社会」が到来する危惧をぬぐい去ることはできない。

 ▼「そもそも必要か疑問」

 平成14年以降、何度も構想が浮かんでは消えてきた人権救済機関だが、「そもそもそうした組織が必要なのかが疑問。法律の全貌を示さずに断片的な情報を小出しにしながら批判回避に明け暮れている」(百地章日大教授)という指摘が今回もある。

 「何が人権侵害にあたるのか」という肝心の問題点も、相変わらず曖昧なままだ。基本方針にそうした定義はない。過去の民主党人権侵害救済法案(平成17年案)では「人権侵害とは『不当な差別、虐待その他の人権を侵害する行為』をいう」とあり「何人も他人に、次に掲げる行為、その他の人権侵害をしてはならない」。これではどうにでも拡大解釈が可能だ。

 ▼言葉が独り歩きの恐れ

 これまで、何が人権侵害とされるのか。各地の弁護士会にある「人権救済」の勧告制度をみると、学校での生徒指導や校則指導、さらに国旗や国歌をめぐる出来事が、「学ぶ権利」や「意見表明権」「思想信条の自由」を奪ったとして「人権侵害」とする例が後を絶たない。

 「学校教育や指導自体が脅かされかねない。国旗国歌の問題での弁護士会の主張も一面的断罪に流れる傾向が強い。既存の制度すら問題なのに、新たな制度ができると、人権侵害という言葉が独り歩きして混乱に拍車をかける危険が高い」(百地教授)

 拉致事件をめぐる北朝鮮への批判や警察の職務質問…。何が人権侵害とされるかへの疑問は尽きない。

 ▼「恐怖社会化が進む

 基本方針では「調査に強制力はなく、調査拒否した場合の罰則規定も当面設けない」とした。その一方で法施行後5年程度をめどに活動内容を見直す条項も含んでいる。政治情勢次第で内容が強化される恐れは十二分にある。

 基本方針の発表を受け、国会内では民主党の「人権侵害救済機関検討プロジェクトチーム(PT)」(座長・川端達夫衆院議院運営委員長)の会合が開かれ、法務省が基本方針について説明した。会合では「5年後に見直すのではなく、今しっかり議論をしよう」との慎重審議を求める意見が出された。

 しかし、基本方針の根幹は6月にPTが示した取りまとめに沿っており異論はほとんどなく終了。会合終了後、川端座長が慎重派の議員に「ずいぶんハードルが低い基本方針になっているだろう?」。糾弾の横行や統制社会をもたらすといった危惧を認識していないかのような口ぶりだった。

 拓殖大学大学院の遠藤浩一教授は「批判回避を図って小細工をしても人権救済機関の設置は密告による社会的抹殺を促し、政治弾圧を横行させ、左翼全体主義的恐怖社会化を進めることになるだろう。そうした法案を進める民主党はもちろんだが、危機感をもって対(たい)峙(じ)しない自民党にも危うさを感じる」と警鐘を鳴らしている。(安藤慶太

http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110802/trl11080222590006-n1.htm

やはり、人権侵害救済法案については産経新聞が詳細に書き立てています。

右派的反対論についてはこの産経の記事を見ていただければ一通り分かると思います。

左派的反対論でも、「人権侵害の定義が曖昧」といった批判はよく見られます。

左派的反対論の一つに、人権委員会の独立性を指摘する問題があります。

法務省の管轄だと、刑務所などでの人権侵害に対して甘くなると言われていたので、

それに対し内閣府の管轄にしようというものですが、結局は法務省の管轄に。

これで左派の反対派をもますます刺激することになり、成立は遠のいたように感じられます。


私も当然ながら、人権侵害救済法案について非常に強く反対しております。

しかし、内外の反発が極めて大きいため、成立する可能性は極めて低いと思います。




さて、規制反対派の最大のジレンマは、何と言っても

児童ポルノ禁止法改定反対派と、人権侵害救済法案反対派の多くがねじれ現象を起こしていて、

両方に反対している人がほとんどいないという、何とも皮肉な現状なのです。

両方に反対している政治家やら文化人やらは私が思い浮かぶ人だけで、

日本共産党城内実衆議院議員、田島泰彦氏、山下幸夫弁護士…

ほんとあまりいません…

どちらか片方の賛成派でもう片方の反対派はよく見かけるんですがね…

あと、両方とも賛成派もなかなか見かけません…