人権侵害救済法案提出と産経が報道

ずいぶん久しぶりの更新です。


長文を書く機会がなかなか出てこなくて、Twitterで済ませていましたが、

長文を書きたい話が出てきました。

人権救済機関設置法案、20日閣議決定で調整 民主保守系反発、阻止へ





 民主党は、政務三役や「人権侵害救済機関検討プロジェクトチーム(PT)」で法案の策定作業を進めてきた。野田佳彦首相も昨年9月の内閣発足時、平岡秀夫法相(当時)に重要政策課題として「新たな人権救済機関の設置」を指示、法務省は昨年12月に法案の概要を発表した。

 ただ、政府内には法案の閣議決定に消極的な意見が少なくない。民主党内の保守系議員も「消費税増税法案をめぐって党内が二分しているどさくさに紛れて法案を出そうとしている」と批判。4月上旬に党の法務部門会議で法案が審議されるとみて、党内手続きの阻止に向けて賛同者を呼びかけることにしている。

 同法案をめぐっては、法務省自民党政権時代に「人権擁護法案」を策定した。しかし、自民党内で反対論が出て、断念に追い込まれた経緯がある。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120403/plc12040301100001-n1.htm

さすが、産経新聞らしいスクープといったところです。(皮肉半分)

表現の自由言論の自由を侵害するとして反対の声が高い人権侵害救済法案

提出する動きが急浮上しているという報道です。


骨子や内容については、以下のリンクをご覧ください。

ネトウヨまとめサイトを見るより、産経の記事の方がはるかにまともですから…

法務省が人権救済機関設置法案の概要を発表

人権救済機関設置法案の骨子

人権擁護法/人権侵害救済法の問題点・基本編(Togetter)



そういえば、ネット情報で、「人権擁護法案が成立する!!」という話がことあるごとに拡散していましたが、

産経新聞が報道していない」という事実を確認すれば、ほぼ確実にデマだと分かりました。

法案が提出されたなら、いずれ確実に衆議院あるいは参議院のサイトに出てくるはずですし。

第一、人権侵害救済法案に関して、何らかの動きがあった時点で産経が黙ってはいないでしょう。



ちょっと経緯についておさらいしておきましょう。

2002年に人権擁護法案が最初に提出された当初は、「メディア規制法案」と呼ばれ、

反対派の大部分はマスコミと左派が目立ち、ネット世論

ネット規制につながるから反対という意見の他に、マスコミや左派を軽蔑する側からは賛成する意見もあったような記憶があります。

その影響もあり、2003年の衆議院解散とともに廃案になりました。


2005年に再提出の動きがありましたが、その時から反対運動の趨勢が逆転しました。

反対派の主軸はメディアから、保守・右派の政治家やジャーナリスト、ネット右翼などに変わり、

産経新聞などの保守・右派系メディア以外ほとんど報じなくなりました。

自民党の保守・右派色が強い議員らが強硬に反対したことにより、葬り去られました。

(実は郵政造反組とかぶる議員も多く、半分政局がらみを疑わせる側面もあったのだが…)


2008年の福田康夫内閣の時にも再提出の動きが自民党内であり、

推進派の太田誠一氏が独自の修正案を提示しましたが、当然のごとく反対され、

自民党政権下では。ほぼ完全に葬り去られた形となりました。


一方、民主党は2005年、自民党内で再提出の動きがあった時に、

人権擁護法案の対案として、人権侵害救済法案を提出しています。

民主党が政権を取ってから、法務省内で再度議論が行われており、

上記のリンクの通り、骨子がまとめられています。


当然ながら、民主党内でも保守・右派を中心に反対する動きがあります。

民主党に人権救済機関法案反対議連 月内発足へ

という報道が以前産経であった通り、民主党内にも反対の動きが出ているのです。


それにしても、人権侵害救済法案反対派の多くが、

他の表現規制につながりかねない法案に賛成しているというのが、何とも皮肉なねじれ現象です。

両方に反対しているのは、せいぜい日本共産党ぐらいしかいないのが現状です。


あと、人権侵害救済法案が成立すれば、在特会とかその手の団体のヘイトを止めることができると思っているなら、

残念ながらそれはとんだ見当違いだと言わざるを得ません。

むしろ、このような法案が通れば、在特会などはますます増長することになるのではないでしょうか。

逆に、在特会側が在特会側によって潰されるという事態も起こりうるわけです。



このように、「言論弾圧につながりかねない」と危惧されている法案なので、

是非とも、日本ペンクラブ弁護士会に反対していただかないといけません。

青少年健全育成条例改定問題の時に、ペンクラブと弁護士会を槍玉に挙げ、

「完全に左翼の人たちです。」「表現の自由を口実に日本解体をしようとしている。」

と発言した水島総氏ですが、日本ペンクラブ弁護士会人権侵害救済法案に反対したら、

当然、水島氏は「反対する人は左翼」だとか言うんでしょうね!?

(もちろん、言うわけないに決まってるだろうが…)




その後、6日間に新しい報道はありませんでしたが、公明党のサイトにはこのような内容の記事がありました。

人権侵害の救済に全力



公明党同和対策等人権問題委員会の西博義副委員長(衆院議員)は31日、大阪市内で開かれた部落解放同盟第69回全国大会に出席し、あいさつした。

この中で西氏は、今国会で提出が見込まれる人権侵害の禁止や救済制度などを定める「人権侵害救済法案」について、与党の方針がいまだ定まっていないことを指摘。

その上で西氏は「何としても今国会で議論し、成立させなければならない」とし、「一日も早く人権侵害を救済する仕組みができるよう、公明党は一致団結し、皆さまと連帯しながら全力で推進していく」と語った・

http://www.komei.or.jp/news/detail/20120401_7708

となると、公明党は採決の場で賛成する方向になるのでしょうか。

恐らく、自民党は反対するでしょう。政局的な理由もあるので、推進派も反対に回るのではないでしょうか。

そもそも、まさかとは思いますが、人権侵害救済法案提出の動き自体、

自公分断を狙った動きではないか!?という疑念さえ出てきます。