日本解放工作要綱と表現規制

日本解放工作要綱とは、中国共産党が作成した対日工作活動の文書、とされている文書です。

今知られているものは「日本解放第二期工作要綱」のみで、「民主連合政権」の樹立が目標とされています。

また、第一期は日中国交正常化が目的で、第三期は日本人民民主共和国の樹立によって天皇を戦犯として

処刑することが目標だと定められていると言います。


Twitter小池百合子氏が

中共の「日本解放工作要綱」にならえば、事業仕分けは日本弱体化の強力な手段。カタルシスを発散させながら、日本沈没を加速させる…。

http://twitter.com/ecoyuri/status/6083239039

とつぶやいたことで有名になった怪文書です。


これは諜報文書とされている割に素人が読んでもほぼ意味が通る内容で、

特殊な用語らしきものは「工作」と「P・T・機関」ぐらいですよ。

1972年当時は中ソ対立の真っただ中(だからこそ米中が接近した)でしたが、

ソ連がシベリア抑留の際に、抑留者を洗脳する工作を「民主化」と呼んでのだから

「民主連合政府」が中国型社会主義政権を想定したものなのは明らかでしょう。

「民主連合政府」樹立を大衆が許容する温床を作り上げること、このための世論造成、これが本工作を担当する者の任務である。

「民主連合政府」反対の論調を挙げさせてはならぬ。しかし、いかなる方式かを問わず、マスコミ自体に「民主連合政府」樹立の主張をなさしめてはならない。これは、敵の警戒心を呼び覚ます自殺行為に等しい。

「民主連合政府」に関連ある事項を全く報道せず、大衆はこの問題について無知、無関心であることが最も望ましい状態である。

この部分が「民主党に都合の悪いことは報道しない」といった図式で解釈される箇所ですが、

私は文字通りに読むと民主党政権成立の過程とは逆のように思いますが…

なにせ、「いかなる方式かを問わず、マスコミ自体に「民主連合政府」樹立の主張をなさしめてはならない。」

と書かれているぐらいですから、「民主連合政府」が民主党政権のことを指しているのだとすれば、

一部マスコミが政権交代を争点にしていたのでこの部分と明らかに矛盾していると思います。


C.マスコミの主流から締め出された反動極右の反中国の言動は、単行本に出路を求めているが、これは手段を尽くして粉砕せねばならない。

  特に、社会主義建設の途上で生じる、止むを得ない若干の歪み、欠点について、真実を伝えると称してなされる暴露報道を絶対に放置してはならない。これらについては、誹謗、デマで両国関係を破壊するものであるとして、日本政府に厳重に抗議すると共に、出版社主、編集責任者、著者を告訴して根絶を期すべきである。

と書かれているにも関わらず、中国批判の本の著者や出版社が訴えられたという話を

寡聞にして聞いたことがありません。




それに、マスコミを利用した情報操作なんて、

古今東西どの時代にも使われていたプロパガンダの普遍的理論です。

そもそも、中国の文書なのに、原文であるはずの中国語版の存在が不明なのは不自然。

第一、極秘のはずの諜報活動の文書を素人が読んで大部分の意味が通る内容なのも不自然。

というわけで、私はこの文書が中国共産党の作成したものだとは思えません。


ただ、これが本物にせよ偽物にせよ、曖昧で抽象的な文章で書かれているわけですから

読む人の主観によって都合のいいように解釈できる代物なのは間違いないでしょう。





私は日本解放工作要綱を信じている人への皮肉も兼ねてこう言います。

中共の「日本解放工作要綱」にならえば、表現規制は日本弱体化の強力な手段。カタルシスを発散させながら、日本沈没を加速させる…。

要するに、理屈をこじつければ表現規制も中国の陰謀と言うことにできるということ。

表現規制が中国の工作活動によるものだという「根拠」となる文面は、

 日本の保守反動の元凶たちに、彼等自身を埋葬する墓穴を、彼等自らの手で掘らせたのは、第一期工作組員である。田中内閣成立以降の工作組の組員もまた、この輝かしい成果を継承して、更にこれを拡大して、日本解放の勝利を勝ち取らねばならない。

要するに、「保守反動」が自ら中国に好都合なことをするように仕向けさせるというわけだ。

そうした観点で

 D.一般娯楽面の出版については「デンマークの進歩を見習え」として、出版界における「性の解放」を大々的に主張せしむべきで、春画、春本の氾濫は望ましい。

を読むと、3S政策に代表されるような「ポルノを利用した愚民化政策」とか、

「不満のガス抜きに性表現を利用する」という解釈は不自然なように感じられます。

何せ、この要綱において中国は日本を

支配している」のではなく、「支配しようとしている」側なのですから。


むしろ、「性表現を口実に言論統制させるように仕組む」という解釈の方が

「保守反動」が自ら墓穴を掘るように仕組むという観点から見ても適切では!?



春画・春本の氾濫が望ましい理由は一切言及されていないのですから、

こんな解釈でも問題が無いわけです。


どのような狙いかというと、性表現の氾濫→保守派が有害だと騒ぐ→有害図書規制が始まる

有害図書規制を中国が利用して中国に都合の悪い本を有害図書に指定し、根絶を図る。

といった感じです。

いやはや、中国共産党の陰謀は本当に恐ろしいですね!!

これさえあればどんな物でも中国共産党の陰謀にしてしまえるのですから。


事業仕分けをこじつけるよりは、むしろ表現規制をこじつけた方が、

陰謀論としても面白い気がするのですが。