表現規制推進派に正論はどこまで通じるか 

我々表現規制反対派は、規制推進派の主張する、

「性表現は性犯罪や子どもを狙った犯罪を助長する」などという主張に対して、

しばしば「性表現と性犯罪の関連性は薄い」とか「昔の方が性犯罪や子どもをねらった犯罪が多かった」などと

データを提示して反論しますが、はたしてこれで通じるものだろうか。

私は通じないと思います。だから、この問題は非常に難しいのです。


今回は、そのことについて少し掘り下げていきたいと思います。

「人は自分が信じたいものしか信じない」 山本弘に学ぶ

規制推進派の唱える主張が、規制反対派のいう正論と異なることなどから、

しばしば推進派は反対派からトンデモ呼ばわりされます。


私は規制推進派の人間をトンデモ呼ばわりすることを避けますが、規制反対派の人間が

どれだけ正論を述べて反論したとしても、のちほど指摘する例を見ればわかるように、

規制推進派の信念を変えさせることはほぼ不可能でしょう。

事実、と学会会長の山本弘氏は南京大虐殺論争について書かれたページに次のように書いています。

 これは南京大虐殺論争にかぎったことではない。「アポロは月に行っていない」とか「相対論は間違っている」とか「ナチのガス室はなかった」とか、最近では「水は答を知っている」とか「9.11テロはブッシュ政権による捏造」という論争なども、たいてい同じ経緯をたどる。いったんトンデモ説を信じてしまった者は、いくら論破されても間違いを認めない。
 僕自身、昔、アダムスキー信者やラエリアンや反相対論者と議論したことがあるが、いくら証拠を並べ立てても、彼らの信念を変えられたことは一度もない。
 彼らはまさに「自分が信じたいものしか信じない」のである。

(中略)

 だから「山本弘は小説の中の議論では勝てても、現実の議論では勝てないんだろう」と嘲笑されても困るんである。ああ、そりゃ確かに勝てませんとも。「勝つ」という言葉が「相手が負けを認める」という意味なら、トンデモさんとの議論に勝つことは絶対不可能である。
 だから僕はみなさんにこう忠告する。「トンデモさんと議論はするな」。相手が負けを認めない「無敵くん」と分かった時点で、さっさと撤退すべきである。

http://homepage3.nifty.com/hirorin/nankin00.htm より

なお、山本弘氏は「あなたの知らない児童ポルノの真実」という特設ページを作っていますが、

山本氏は児童ポルノ法改定を阻止するためにはどうすべきだとお考えなのでしょうか?

「トンデモさんと議論はするな」と言っている山本氏ですから、どんなに正論を述べたとしても

規制反対派の信念を変えることが困難なことは百も承知のはずです。

アダムスキーラエリアンらとは異なり、完膚なきまでに論破しない限り、規制推進派の主張が通ってしまいます。

例の署名運動の賛同者リストに名前を連ねているわけでもありません。

http://www.savemanga.com/search/label/%E8%B3%9B%E5%90%8C%E4%BA%BA%E4%B8%80%E8%A6%A7

賛同者リストを見ても山本氏の名前は載っていませんでした。

(もしかしたら、賛同者リストに名前を載せていないだけかもしれませんが…)

それらのことについては今後、明らかになってくるのでしょう。山本弘氏の言葉には注目していきたいと思います。


とにかく、表現規制推進派に私たちが「性表現と性犯罪の関連性はきわめて少ない」とか、

「子どもを狙った犯罪は減っている」などとデータをあげた上で反論したところで、聞く耳を持ってはくれないでしょう。

だからこの問題は非常に厄介なのです。



もっとも「自分が信じたいものしか信じない」という点では、規制反対派にも同じことが

言えるとは思いますが…

というわけで、その代表例をあげたいと思います。


よく規制反対派の中で、「性表現と性犯罪の関連性はない」と言い切ってしまう意見がありますが、

とんでもない暴論だと思います。


あるかないかという二択であれば、私は「ある」と答えるほかはないと思います。

こういった二分法は、主に推進派が使うロジックなのですが、反対派も同じような罠に陥りがちなので

十分に注意した方がいいでしょう。


選挙は正論だけでは勝てない

正論だけでは太刀打ちできないものの代表例として、選挙があります。


民主党の若手議員を中心に、真面目に政策を訴え続けていれば選挙に勝てると思い込んでいるように感じられます。

確かに、それで選挙に勝てるのであれば最も理想的な形なのですが、現実は甘くありません。

真面目に政策を訴え続ければ選挙に勝てるなんて、

神話にすぎないのです!


現に、(2004年の参議院議員選挙の結果もあり)真面目に政策を訴え続ければ選挙に勝てると思い、

選挙活動を行ってきた岡田克也元代表率いる民主党は、刺客作戦などワイドショー受けする作戦を

用いた自由民主党に大敗しました。小泉劇場にしてやられたりです。*1


しかし、小沢一郎代表はそんな神話を信じていません。

自民党幹事長として剛腕を振るった海千山千の人間が、政策だけで選挙を勝てると

思っているはずがありません!!


実際に解散風が吹くや否や、刺客候補を擁立し始めていますし、小沢代表自らさえも

選挙区を変え、刺客として(東京12区で?)出馬することを検討しているほどです。

ゆえに、小沢代表が小沢劇場の演出を狙っているのは明々白々です。

麻生太郎氏が国替えを検討しているという話もありますが、小沢代表の刺客作戦に焦りを

見せている表れなのではないでしょうか。

いや、だからこそ自民党は総裁選を通じて先手を打って劇場型政治を演出しようとしたのでしょう。


ワイドショー受けする手法を用いれば選挙で有利に戦うことができるというのは、

自民党の多くの議員と、民主党の大ベテラン議員の間ではすでに大常識のようです。

好ましいかどうかは関係なく、選挙を有利に戦うには、ワイドショー受けする戦術を用いて

メディアにアピールするという手法が非常に有効だということはすでに自明なのです。

選挙は正論だけでは決して勝てないのです。

まとめ

以上のことをまとめると、メディア対策の点で優位に立っている規制推進派の優位は

たとえどんなに正論を述べたとしても崩すことは困難なように感じられます。

だから、人権擁護法案のロジックを応用できないものかと考えているところなのです。

ヒステリックな流れを作ることによって、反論の余地を潰した成功例としては

人権擁護法案の反対論は非常に有効なアイデアではないかと思います。


なお、mudanさんとも意見のやりとりをしてみたいと思います。

*1:逆に、もし自民党が政策だけで勝負し、民主党小泉劇場のような作戦を展開したなら、前回の総選挙で政権交代したと思います。