京都府の廃棄勧告条例案について

全国初の児童ポルノ廃棄命令、所持も禁止 京都府アニメ除き条例化へ

 
 京都府は22日、児童ポルノの取得・所持を禁止し、違反した場合に廃棄命令を出すことを盛り込んだ条例を制定する方針を固めた。平成23年度中の制定を目指す。同日、府の有識者会議が検討結果をまとめた。
 
 府によると、廃棄命令付きの条例は全国で初めて。児童買春・ポルノ禁止法では規制対象となっていない提供目的以外の「単純所持」も禁止し、廃棄を進めることで被害児童の救済を図る。
 
 検討結果によると、18歳未満が被写体となった性行為などの画像や映像が対象。廃棄命令に従わなければ罰則を科すことも検討する。性的虐待が明らかな13歳未満の画像などを有償で取得した場合は、廃棄命令を待たずに刑事罰を科すのが適当としている。アニメなどは対象外。
 
 山田啓二知事は22年4月の知事選のマニフェスト(公約集)に「日本で一番厳しい児童ポルノ規制条例の制定」を掲げていた。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110222/lcl11022213570002-n1.htm

朝日新聞の記事では、東京都、大阪府宮城県の状況が簡単に説明され、園田寿氏の

「個人の所持を刑罰で規制することまで議論が尽くされておらず、児童ポルノの定義もあいまい。プライバシーを侵害する恐れもあり、過剰な規制にならないか懸念する」

http://www.asahi.com/national/update/0222/OSK201102220050.html

とのコメントが載っています。

読売新聞では

 わいせつ画像と動画の定義は、児童ポルノ禁止法に準じて、〈1〉児童の性交または類似行為〈2〉児童の性器等を触ったり、児童に性器等を触らせたりする行為〈3〉衣服の全部または一部をつけない児童――などとする。〈3〉に該当する画像、動画のうち、廃棄命令の対象となるのは「全裸か性器露出」と決めた。

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/kyoto/news/20110222-OYT8T01174.htm

と規制の対象が説明されています。


毎日新聞の記事では京都府内での議論について、他の記事より踏み込んだ内容になっていて、

3月末までに知事に報告されることと、府民から意見を募る手続きを経ることに言及されています。



どの記事でも説明されているように、この中で提案されているのは廃棄命令形式です。

所持規制の対象となっているものを所持している人に対して府が廃棄命令を出し、それに従わなかった時点で初めて処罰対象になる。

というのものです。ただし、13歳未満のものを有償で取得した場合は廃棄命令無しで処罰対象です。


児童ポルノの定義の曖昧さはしばしばこの手の問題でクローズアップされますが、

どうも、廃棄命令形式をとれば冤罪の心配をする必要はないだろうという理屈のようです。

廃棄命令が出なければ、処罰の対象にはなりえないわけですから、ただ鉄道や自動車で通過するだけで

この条例の処罰対象になるということはほぼあり得ないと思われます。

確かに、冤罪は少ないかもしれませんが依然として問題は山積みです。


しかも、読売新聞の記事の説明を見る限り、3号ポルノの

「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの」

よりも広いと受け取るのが自然なような気もしますし、

「性欲を興奮させ又は刺激するもの」でなくとも、廃棄命令等の対象になる恐れが高いような気がします。

少なくとも、グレーゾーンの過激なその手の写真集は確実に引っ掛かりそうな気がします。

私はその手の写真集は販売等を規制しても構わないんじゃないかと思わなくもないですし、

摘発例もいくつかあるようですが、最高裁判例下級裁判所の裁判例が出ていないので

それが児童ポルノに該当するのか、あるいは判例における児童ポルノの定義がどうなるのか気になるので、

是非ともその手の写真集が摘発された際には、その関係者は最高裁まで争っていただきたいのですが。


京都新聞のコラムでは

求められる慎重判断 府、児童ポルノ規制条例化

 
 京都府児童ポルノ規制検討会議は31日、写真や映像の単純所持・取得を禁止し、廃棄命令や罰則など全国でも厳しい規制を児童ポルノ規制条例案に盛り込むよう求める方針を打ち出し、府はこれにに沿って条例案を策定する考えだが、実現には難しい課題も多い。
 
 児童ポルノの単純所持・取得禁止は、現在の児童ポルノ禁止法では取り締まれない収集者や愛好者に一定の制限を設けて、児童ポルノの製造や流通、拡散を防ぐ狙いがある。
 
 単純所持・取得禁止を徹底させるため廃棄命令という手段も必要とした。命令は刑罰でないため、知らない間にメールなどで児童ポルノが送りつけられても罪に問われる事態を防ぐ利点もある。
 
 ただネット上に児童ポルノが氾濫(はんらん)する現状では、府内のみが対象の条例には限界がある。児童ポルノの定義の解釈も難しく、捜査機関の恣意(しい)的な判断を招き、表現活動を萎縮させる恐れもある。こうした課題解決が今後の焦点になる。
 
 今回、規制強化を目指すのは、山田啓二知事が昨年4月の知事選で「日本一厳しい条例を作る」と訴えたのが始まりだが、全国的にも影響を与えるとみられ、慎重な判断が求められる。

http://www.kyoto-np.co.jp/local/article/20110201000017

と、廃棄命令は単純所持規制よりも冤罪の危険性が低いと指摘しつつも、

定義の解釈の難しさと表現活動の委縮への懸念、全国的に影響を与える可能性にも言及されています。

全体的には慎重です。積極的に反対すると言うほどではなさそうですが。

京都新聞のコラムの作者の苦労を感じさせます。


いずれにせよ、これは一部で話題に上る、

表現の自由や冤罪の危険性を掲げた反対論には限界がある」という話を裏付けそうになりそうです。

「単純所持規制が児童の保護につながる」という言説に対抗し、説得力を持たせるのは極めて困難なのです。

創作物ならまだしも、実際の児童の、それも誰もがおぞましく感じるような代物だったらどうなのか。

少なくとも、私は反論する自信は全くありません…

創作物や単なる裸の写真だったらまだしも、ひどい代物だったら反論はできないでしょう…


さて、早ければ3月にもこの条例案に関してパブリックコメントが募集されるそうです。

特に、京都府民の皆さん、是非とも意見を送ってください。

その際には改めて報告します。