もうひとつの表現規制問題?

児童ポルノ禁止法改正問題ばっかりを取り上げてまいりましたが、

別の表現の自由に関する問題があるので取り上げたいと思います。

日本のアニメ、中東で批判・集英社、DVDなど出荷停止

http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20080522AT1G2201622052008.html

異文化への無知で波紋 ネット通じ思わぬ視聴者

http://www.47news.jp/CN/200805/CN2008052201000448.html

ジョジョの奇妙な冒険』の中のコーランを扱った場面が、イスラム教徒から

顰蹙を買ったようです。

外務省もコメントを発するという異例の事態になりました。


そもそも、アラビア語のサイトで批判があったのが発端だそうですが、

日本の漫画やアニメを見ている人がイスラム圏にまでいるとは、あまりに意外です…


イスラムに関しては、『悪魔の詩』がイスラム教を冒瀆していると非難され、

1989年にイランの最高指導者ホメイニ師(当時)が死刑宣告を発したできごとがあります。

抗議するデモや暴動も多発し、日本でも翻訳者の五十嵐一氏が何者かに殺される事件がありました。

デンマークの新聞が掲載したムハンマドの風刺画をめぐる騒動の時にも大規模な抗議活動が起きましたし、

イスラム教徒が自分の信教を冒瀆されたと感じた時の怒りは相当なものがあるのです。


漫画の描写が波紋を広げた例をもうひとつあげます。

空気が読めない本宮ひろ志先生とヤングジャンプの編集者が、うかつに

南京大虐殺の描写を『国が燃える』に掲載し、保守派の地方議員が抗議したという事件がありました。

(むしろイデオロギー論争的側面を持つ)歴史問題を扱うのですから、もう少し慎重になるべきでした。

事実、集英社街宣車が押し寄せたそうですし、政治思想がからむ話題を迂闊に扱うことの問題点を

漫画業界は思い知ることになったのではないかと思います。

もっとも、『ゴーマニズム宣言』のような政治思想そのものを扱う漫画は例外ですが…



さて、『悪魔の詩』事件や、『国が燃える』事件を考えると、なぜ『ジョジョ』は今まで

問題にならなかったのか不思議です。『ジョジョ』なんて20年以上も連載されていますし、

週刊少年ジャンプ」は最大で約653万部発行されているので、日本の20人に1人以上は

ジャンプを読んだ計算になります。

近年は日本にもイスラム教徒は多数来ているのですから、彼らが本屋でたまたま見て、

『これは、イスラム教に対する侮辱だ!』と抗議することがあっても不思議ではないと思いますが…


ムハンマドの風刺画の時には多くの風刺画家が「表現の自由」を掲げ、イスラムの批判に対する

抗議の意思をこめてムハンマドの風刺画を描いたといいますが、

そもそも、風刺漫画ではないのですから、宗教がからむ描写は慎重に扱っていただきたい。

失礼ながら、荒木飛呂彦先生と週刊少年ジャンプの編集部はなぜ今まで気づかなかったのか

不思議で仕方がありません。


悪魔の詩』事件や、有害コミック騒動、『燃える!お兄さん』回収事件などが

あったご時勢でしたから、何か抗議活動や編集者からの指摘があっても

不思議ではなかったと思いますが…



表現の自由」といえども、政治思想や宗教を扱う時には慎重になるべきなのではないでしょうか?

とすくなくとも私は思います。


補足:

どうも、共同通信マッチポンプ疑惑が上がっているみたいですね。

電突した人もいるみたいですし、

http://d.hatena.ne.jp/SHIKAIKILYOU/20080525/p1

それによると、共同通信の方もそれを認めているらしいんですね…


アラビア語サイトに『ジョジョ』を非難する書き込みをしたのが

共同通信の関係者だとは限りませんが、

いずれにせよ、マッチポンプ報道ではないかと思わせるものであり、

疑問を感じざるを得ません。


あと、問題の描写はアニメ版のみらしいですね…

原作版ではコーランは出てこないらしいです。

id:SHIKAIKILYOUさんのおっしゃることにもある程度は

理解できるのではないかと思います。

ジョジョ』のファンのようですしね…