表現規制反対の署名運動の成果に関する考察(その2)

この記事は http://d.hatena.ne.jp/slpolient/20080818/1219052852 の続きです

さて、児童ポルノ禁止法を改定し、漫画、アニメ、ゲームなどの創作物を

規制することや、児童ポルノの単純所持を禁止することを盛り込むことに対し

反対する署名運動が行われましたが、署名の数は伸び悩んでいます。


さて、それはなぜなのでしょうか…

その考えられる理由を簡単に箇条書きすると、

・広報が不足していたから
・胡散臭い印象を与えたから
・参加者が皆、無関心だったから
・実は失敗ではなかった

などといった理由が考えられます。

順を追って、私の推測をいくつか挙げたいと思います。

「広報不足」説

最大の理由の一つがこれではないかと思います。@++さんも「影が薄かった」と

おっしゃったぐらいですから、署名運動を周知させるための広報が不足していたのでしょう。

ホームページやブログで告知しても、こういった運動に初めから興味がある人しか注目せず、

カタログに載せても、ビラを各サークルに配布しても、あまり人を集めることができなかったのでしょう。

「胡散臭い印象」説

まあ、署名運動というものは、どうしても胡散臭さが出てしまうものですが…

署名運動が元来そうしても含んでしまう、プロ市民臭だとか何だとか言う

胡散臭さもありますが、今回は別の意味での胡散臭さについてです。


以前申し上げた通り、賛同者リストには(その皆様には失礼いたしますが)

市民、会社員、大学院生などといった権威のかけらも無い肩書きを持つ人物の羅列や、

大物や小物などの漫画家の中に連ねる多くの成人向け漫画家が載っていることが

署名運動に胡散臭い印象を与え、かえってマイナスになっているのではないかと

私は懸念しているのです。


しかし、私が挙げた胡散臭さを胡散臭いと考えるコミケ参加者は、少ないので、

それほど大した影響を与えているわけではないのではないかと思います。

一般人を相手に署名活動するのであれば問題だと思いますが、コミケ参加者を

対象にしているなら、それほど大した悪影響はないと思います。

よって、私の懸念はコミックマーケットという場に関しては心配するほどでも

ないのかもしれません。

「無関心」説

実は、もしかしたら最大の原因かもしれないと踏んでいます。

私は、コミックマーケットに参加する人は表現規制問題に関心が高い人が

多いだろうから、署名もさぞかし多く集まるのではないかと期待していました。

結果として、12,000〜20,000人ほどの署名を集めたそうです。

まだ、集計結果が出ているわけではないので、正確な数は分かりませんが、

少なくとも、私や@++さんが期待していた量には到底足りなかったわけです。


おそらくその原因は、コミケ参加者が私たちの思っていた以上に

表現規制問題に無関心な人が多かったからではないかと思います。

具体的に言うなら、ノンポリが多かったということになるのでしょう。

右翼にせよ、左翼にせよ、その他にせよ、政治的な思想信条を持っている

コミケ参加者のほとんどは表現規制問題に強い関心を持っており、

署名活動に関しても注目していることでしょう。

しかし、実際にはノンポリがほとんどだった。児童ポルノ法改正のどこが

問題か、表現の自由を守るにはどうすべきかと言う人はあまりおらず、

下手すれば、単純所持という言葉も知らない人がいるのではないかと思います。*1

コミケに参加する人は表現規制問題に関心が高いに違いないという

過大な期待が署名の数が伸び悩んだ理由の一つだというわけです。


私もそう思ったぐらいですから、もちろん署名事務局のスタッフも、

コミックマーケットの参加者は表現規制問題に関心が高く、

 積極的に署名運動に参加してくれるはずだ」

と思っていたのでしょうが、実際にはほとんどの人は表現規制問題には

無関心だったのでしょう。

過大な期待をしていたことが署名の数が伸び悩んだ原因の一つかもしれません。

過大な期待をしてしまうと、広報宣伝も手が抜けてしまいますからね…

「実は失敗ではなかった」説

「実は失敗ではなかった」説を取り上げる論拠となるのが、署名事務局の

大したトラブルもなく、予想外に多くの方々から署名をして頂きましたことをスタッフ一同、
大変に嬉しく感じております。

http://www.savemanga.com/2008/08/blog-post_17.html

という一言です。まず、この言葉をどう解釈するかには二つの考えがあるます。

一つは、大本営発表のように劣勢であることをひた隠しにするため、あるいは

士気を高める、見栄を張るなどのために、成果を実際より誇張して伝えた可能性であり、

もう一つが、文字通り署名が予想以上に集まったという可能性です。

可能性は低いと思われますが、日本ユニセフ協会などの規制推進派を油断させるための

ブラフという可能性も決してゼロとは言えないでしょう。


拡大準備集会の時点で、ユニセフ協会の署名はコミケ準備会が把握しているだけで

3万人ほどだそうですから、@++さんがおっしゃっていたように、規制推進派が

5万人分の署名を集めていたとしてもおかしくないでしょう。

ですから、署名事務局も12,000〜20,000人分では少なすぎるということは

当然、十分に分かっていると思うのですが…

ということは、予想外に多くの人々から署名をもらったというのは、

事務局の見積もりがあまりにも少なかったから、あるいは、郵送で受け取った分の

署名だけで、コミックマーケットで集めた分を大きく超える数の署名を集めたから

だという解釈もできますが、実際のところはどうなのでしょうか…

今度、事務局に質問メールを送ることを検討しております。

*1:単純所持が罪になるものには、麻薬や覚醒剤などもあるが、報道時には「所持の罪」などとは言うが、「単純所持」とは言わない