派遣村に関する諸雑記

昨年の年末ごろから派遣切りなどにより、失業者が急増しています。

それらの失業者を救うべく、NPO労働組合の手により「年越し派遣村」が開かれ、

炊き出しや生活相談、臨時の宿泊所の設置などが行われました。


マスメディアでも頻繁に取り上げられた派遣村ですが、ここにきて、

坂本哲志総務政務官の「本当に真面目に働こうとしている人が集まっているのか」という

発言がきっかけで、ネット上にある派遣村に対する批判が浮き彫りになりました。

派遣村「真面目な人なのか」発言 ネットでは擁護論目立つ

http://www.j-cast.com/2009/01/06033224.html

という記事でも、ネット上の派遣村バッシングについて言及されています。


坂本政務官の発言が出る前は、労働組合とか市民団体が主催しているのに、

よくサヨクだ何だとバッシングされないものだと不思議に思っていましたが、

なんだかんだ言ってもJ-CASTニュースが記事にしたことで、

より可視化される結果となり、「やっぱりバッシングはあったんだ」と感じたまでです。


サヨク嫌いだけでなく、支援を受けている人々に対する妬みや僻みなども背景にあるでしょう。

さらに、マスコミが揃いも揃って批判的な報道をしなかったことから、マスコミ不信の人間が

反発したのでしょう。産経新聞も表立って派遣村を批判したことは無かったのですからね。


さらに、

失業者支援で思想宣伝をするな! 「派遣村」リポート(上)

http://news.livedoor.com/article/detail/3962551/

の記事で、インターネット上で同種の活動において憲法9条の改正に反対する趣旨の横断幕が

掲げられていたことが槍玉に挙げられ、失業問題に便乗した思想宣伝に対して批判の声が

上がったことや、派遣村に「9条改憲阻止!」のタスキをかけた男がいることが明るみに出ました。

余計な政治宣伝はしてほしくない

 確かに「反貧困ネット」や「もやい」はサヨクかも知れませんが、ただそれは裏を返せば右派の怠慢だと思います。戦後右派は体制迎合、経営側と懇ろになり、労働側を敵視してきました。共産主義の呪縛から放たれてもいまだに右派の体質が変わらない。別に貧困問題はサヨクの専売特許ではなく、ウヨクが反貧困運動をしたっていいはず。

http://d.hatena.ne.jp/kechack/20090107/p1

id:kechackさんのおっしゃる通り。保守・右派が貧困救済をしてこなかった結果、

貧困問題は左派の専売特許として捕らえられるようになってしまったわけです。

ただでさえ、サヨク臭が立ち込めているのに、「9条改憲阻止!」のタスキをかけた男性が、

歩き回っていることが暴露された時点で、完全にプロ市民的なイメージに対する嫌悪感の方が、

失業者たちに対する同情を大きく上回ってしまいました。

護憲を主張すること自体は自由だが、この期に及んでまで宣伝活動するのは、

場の空気が読めていないのではないかと思っています。*1

ネット上だったら、大炎上していてもおかしくないでしょう。


9条は余計だ! 派遣村では失業問題に集中してくれ!! というのが私の本音です。


私は「年越し派遣村」の活動を支持します。

支持するからこそ憲法9条云々ということに苦言を呈したいのです。

ハマスが支持されるのは、貧困救済に熱心だから

話は変わりますが、なぜハマスなどのイスラム武装組織は多くのパレスチナ人に

支持されているのでしょうか?

反米、反イスラエルだからだと多くの方は思われるかもしれません。

実はもう一つ、支持される大きな理由があるのです。

それは、ハマスらが貧民救済や社会福祉に非常に熱心だからです!!

ハマスの活動は主に2つ:イスラエルに対するジハード(聖戦)と社会福祉社会福祉では、病院や学校を建てる他に、食糧支援なども行っている。しかし、テロと強烈な反イスラエル教育を行っているのも事実。

http://wiki.livedoor.jp/moshejp/d/%A1%DA%A5%CF%A5%DE%A5%B9%A1%DB


ハマスだけでなく、ヒズボラなど主要なイスラム武装組織の多くは、

生活の苦しいパレスチナ人らのために、病院や学校を建てて医療や教育を受けさせ、

食糧が手に入らない人に対し、食糧支援を行っているのです。

むしろテロリストとしての活動より、これらの社会福祉活動の方が中心です。


ハマスなどのイスラム過激派は、単にイスラエルを敵視し、時にテロという形で攻撃するということにより、

パレスチナ人にガス抜き、鬱憤晴らしの場を提供しているというのは大きな間違いであり、

パレスチナ人がハマスなどのイスラム武装組織を支持して理由ということに関しては、

反米・反イスラエル感情というよりも、むしろ貧困救済や社会福祉活動によるものだと

考えた方がいいのかもしれませんね。


日本の右派と違って、ハマスらはパレスチナの貧しい人々に具体的な支援をしてくれます。

これでは貧しいパレスチナ人がハマスらを支持するのは至極当然のことでしょう。

彼らにとって、ハマスは救世主のような存在なのですから…


余談ですが、日本において暴力団員に被差別部落出身者や在日韓国・朝鮮人が多い背景にも

似たような状況があると思います。社会的弱者である彼らがまともな仕事に就くことができず、

ヤクザの世界に足を踏み入れざるをえなくなってしまったからだという見方があるのです。

在日や部落だけでなく、戦争孤児も同様です。『はだしのゲン』では、原爆で親や家族を

亡くした子供たちがヤクザの舎弟になるシーンがしばしば出てきていることからも分かるように、

戦後の最も貧しい時期にこれらの社会的弱者を受け入れてきたのが、何を隠そう

ヤクザだったのでした。そして、その名残が暴力団の構成比においてマイノリティの割合が

非常に多い理由の一つとなっているのではないでしょうか。

貧困救済は撒き餌である

さて、話は戻ります。 ハマスの例からも分かるように、貧困救済は、

(貧困問題とは関係ない)政治的動員に極めて有効です。「9条改憲阻止」のタスキをかけた

人も、同様の考えなのではないかと思われます。

要するに、貧しい人に救いの手を差し伸べることにより、自分の意のままに

その人々を動かそうという魂胆です。


敢えて下品な表現を用いるとすれば、貧困救済は撒き餌みたいなものです。

貧困救済する人の中には純粋に助けたいという人も多いとは思いますが、

何か別の狙いを持つ人が貧しい人を寄せ集めるために貧困救済することの方が、

現実的には多いのではないかと思います。

右が貧困救済してもいいじゃないの

さて、先ほどkechackさんの「ウヨクが反貧困運動をしたっていいはず」という言葉を

引用しましたが、


右翼団体は、保守派と違って財界の顔色をうかがうことなく、

自由に反貧困活動することができます。


反貧困活動をすることができれば、たとえ露骨な宣伝活動を一切しなくても、

貧困者を自分たちに取り込むことができるのではないでしょうか?

事実、戦前の右翼団体は貧困救済事業に熱心で、ヨーロッパの極右*2政党は

貧困問題を上手く利用して党勢を拡大しています。2002年の大統領選挙でシラクに次ぐ得票を得た

フランスのジャン=マリー・ルペンがその代表例です。


日本にも、経済界の圧力から自由な右翼団体があると思います。

維新政党・新風なんかは、財界から自由な団体だと思いますが、

実際のところはどうなんでしょうか?


もしそうなら、新風も何らかの手法を用いて派遣村のような活動をし、

「失業者をサヨクの手に渡してたまるものか!!」という意気込みを見せたら、

どんなにいいことかと思ってしまいます。失業者や貧困者を救うことができ、

新風の党勢拡大にもつながり、一石二鳥だと思います。


その活動は、下手なネットでの活動よりもよほど高い効果が期待できると思います。

少なくとも、面白半分、遊び半分の支持者は出ず、これがきっかけで

支持者になった人は、真剣に支持してくれるのではないかと思います。


あ、厳密には政治団体がやると供応になりますから無理ですね…

しかし、間接的な手法を用いたものであれば問題にならずに済むのでは?

派遣村だってそういう面がないわけではありませんし…


まあ、とにかくサヨクだけでなく、ウヨクも貧困救済してくれれば、

困っている人にとって非常にうれしいことだと思います。


もっとも、朝鮮総連将軍様の恩恵の名の下に派遣村をやって、

失業者たちを北朝鮮工作員に仕立て上げるのではないかという不安はあります…


「困っている人間にとっては支援してもらえるなら誰でもいいのです。」というのは

ひどい言い方かもしれませんが、ウヨクだろうとサヨクだろうとイスラム過激派だろうと

ヤクザだろうと誰だろうと、貧困に苦しんでいる人々は助けてくれる人に対しては、

非常に強い恩義を感じ、いずれは彼らの活動を支持する可能性を秘めているのです。


どうせだったら、表現規制反対派も「表現規制反対派遣村」でもやったらいいのに…

無理か…

*1:いや、むしろ本人としては場の空気に溶け合っているつもりなのでしょうが…

*2:といっても、日本における「極右」に比べれば穏健なニュアンスである。