児童ポルノ法改定問題に関するアンケート

児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律改正に関する公開質問状
 子供の人権と表現の自由を考える会

http://cjhjkangaeru.web.fc2.com/organize/question/

先日、単純所持規制と創作物規制を盛り込んだ児童ポルノ法改定に反対する市民団体が、

各政党に公開質問状を送付し、その回答が公開されました。

なお、私はニュースサイト、「カトゆー家断絶」経由で、ITmediaの記事

児童ポルノ法改正問題、各政党の回答をネット公開 - ITmedia News

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0901/08/news113.html

を知り、その記事に貼ってあるリンクを見て知りました。


市民団体の行ったアンケートの質問内容を要約すると、

1−1:児童ポルノ法の改正年であることを知っているか
1−2:児童ポルノ法の保護法益を個人法益から社会法益に変質させることにより、子どもの人権は守れるか?
1−3:現行法で約束された被害者の救済施設等について、9年間被害者の救済がまったく為されていない現状をどう考えるか?
1−4:創作物における表現を、科学的・学術的データも無しに規制する事に法的妥当性があると考えるか?
1−5:規制賛成派のように、感情だけで国民全てを規制するような法律を制定しようとする行為をどう考えますか?
2−1:単純所持規制で、冤罪を防ぐ為にも児童ポルノの定義の厳格化を行う意志はあるか?
2−2:創作物に対して、明確な根拠もないまま単純所持規制をかけるべきか?
2−3:創作物に対する単純所持規制を行う場合、規制の対象はどのような表現を扱った場合と考えるか?
3−1:虐待被害児童の救済を行える体制や親に対する子育て支援に関して、具体的な支援策があるか?
3−2:党としてなんらかの盗撮防止策を制定する必要性は感じているか?
3−3:児童ポルノを取り締まる方針として、党の考えはどうか?
3−4:冤罪事件の予見可能性について。

ということになります。盗撮防止策以外に関しては全て児童ポルノ

改定問題にからんだ質問となっています。


そして、各党のうちアンケートに回答したのは以下のとおりです。

回答:民主党 日本共産党 国民新党 公明党

無回答:自由民主党 社会民主党 新党日本

民主党共産党公明党国民新党が回答しているのに対し、自民党は無回答です。

福島瑞穂党首が自身のブログで単純所持規制や表現規制に反対を明言している社民党も無回答でした。

アンケートの回答から見えること

アンケートに回答した各党の見解を整理し、その内容について各党ごとに考察しています。

共産党の見解

なお回答のうち主要部のみを抜き出しております。(以下、各党同じ)

1−2:
 児童ポルノ法の制定趣旨は、被害に遭う子どもをただの1人も生みださないことであり、万一、子どもが性的被害に遭った場合には、万全をつくして被害者の保護・救済をすすめ、尊厳を維持するところにあると考えます。そうした立場から、児童ポルノ法を、性風俗を取り締まるようなものに改定することには賛成できません。
1−4:
 社会的道義的な問題とは別にして、創作物にたいして一律に法的な表現規制をかけることには慎重でなければなりません。また、もしかりに規制をかけるような場合でも、十分、科学的・学術的な知見・根拠をふまえたものにすべきだと考えます。
1−5:
 現在インターネット上に流布されている児童ポルノは、そのほとんどが現行法によって取り締まることが可能です。
 児童ポルノ法第7条では、「児童ポルノを提供し」、それを目的として「製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸入した者」にたいして、「三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金」がかけられることになっています。
 これを厳格に運用するなら、ネット上に流れているほぼすべての児童ポルノを一掃することが可能となります。
 一方、児童ポルノ法で単純所持を一律に規制したり、漫画・アニメーションなどの創作物も規制対象にくわえたりすることは、児童ポルノ問題の解決に役に立たないだけでなく、逆に、人権の侵害や表現の自由の萎縮につながりかねません。
2−2:
 そうしたアニメ・マンガ・ゲームについて、党としては批判的な視点と立場をもっていますが、そのことと、それらの所持や創作などを、法律で一律に規制することとは別のことです。単純所持を法的に規制することには慎重であるべきです。
2−3:
 すでに指摘したように、ポルノを題材とするような創作物については、社会的道義的な視点・立場から批判の対象にすべきであって、法律で一律に規制することについては、慎重であるべきだと考えます。

http://cjhjkangaeru.web.fc2.com/organize/question/kyousan.html

ご覧頂いたとおり、共産党は反対の姿勢を明確にしています。

さらに具体的な例や政策を例示し、自身の見解を述べています。

共産党を支持するかはともかくとして、このような回答をしてくれることは、

素晴らしいことなのではないかと思います。他の政党も見習うべきです。

国民新党の見解

1−2:
 現行法は、被害児童の人権保護を主眼としており、この点は今後とも堅持していきたいと考えております。
1−3:
 法務省警察庁厚生労働省の共管と認識しております。
1−4:
 上記1−2のとおり、被害児童の人権保護が主眼であり、架空の創作物については、原則として規制の対象外と考えております。
1−5:
 私ども国民新党は、日本の将来にとって有益なものであるかどうかという観点から個々のケ−ス毎に判断しております(国籍法改正については我が党のみが反対しました。)。
2−1:
 単純所持を違法とすることについては、違法捜査の範囲を無制限に拡大しかねない問題を含んでおり、現在、直ちに「定義の厳格化」を進めるつもりはありません。
2−2:
 単純所持や架空の創作物については、原則として法規制の対象とすべきものではないと考えています。
2−3:
 上記のとおりです。

http://cjhjkangaeru.web.fc2.com/organize/question/kokumin.html

国民新党が規制反対なのは意外でした。規制推進派議員がいると聞いていましたし、

党の方向としては保守系ミニ政党なので、規制推進か曖昧な態度をとるかのどちらかだと

思っていましたが、堂々と規制反対の回答をよこしてきました。

おそらくは、党の公式見解として考えていいのでしょう。

(それにしても、国籍法改定についてこの場で出す必要も無かろうに…)

民主党の見解

1−2:
 民主党は、2008年6月11日に児童買春・児童ポルノ処罰法改正案骨子を発表していますが、その中でも本法が風俗犯罪処罰法ではなく、あくまでも児童に対する性的搾取・性的虐待から児童の権利を保護するための法律であることを明確にする観点から、「児童ポルノ」の用語を「児童性行為等姿態描写物」と改めることを検討しています。
1−3:
 民主党は、被害児童に対する保護の措置としては主として児童福祉法に基づく措置が実施されることから、厚生労働省が所管し、その中心的な実施主体である都道府県、児童相談所、福祉事務所、市町村を関係行政機関の例示として規定することを検討しています。
1−4:
 創作物については、検討中の事項です。
1−5:
 民主党としては、可能な限り、現状を把握、調査し、現行法や他法との関係などを含め、慎重に検討をしています。
2−1:
 民主党は、定義を明確化することにより、可罰的でない事案については処罰されず、可罰的な事案については厳正に対処されることが可能となるような検討を進めています。
2−2:
 創作物については、検討中の事項です。
2−3:
 検討中の事項です。

http://cjhjkangaeru.web.fc2.com/organize/question/minsyu.html

民主党の回答は「検討中」ばかりです。

「検討中」という言葉は非常に厄介な代物で、「積極的に取り組んでいく」という意味にも、

「やる気ないけど、とりあえず答えておこう」という意味にも取れてしまいます。

かつて、宝島社の広告で「前向きに善拠する→無視する」*1と風刺されていたように、

「検討中」という言葉が無視するための逃げ口上として使われている可能性も否定できません。


民主党は党内に規制推進派から規制反対派までいる状態ですから、

党としての見解をまとめられていない状態なのかもしれません。ただ、

その中でも本法が風俗犯罪処罰法ではなく、あくまでも児童に対する性的搾取・性的虐待から児童の権利を保護するための法律であることを明確にする観点から、「児童ポルノ」の用語を「児童性行為等姿態描写物」と改めることを検討しています。

と言っていることから、規制慎重派の方が大勢有利なのかもしれません。


いずれにせよ、私は民主党が党としての統一見解を持っていないとことではないかと推測します。

だからこそ、「検討中」とお茶を濁さざるを得ないのではないかと思います。

公明党の見解

1−2:
 児童ポルノは世界的な犯罪であり、擬制(原文ママ)になった子どもたちの心に深い傷が一生残り続けます。公明党は子どもたちを守るため、そして人道、人権擁護のためとの本来の目的に立ち児童ポルノの氾濫を阻止しようと与党での改正議論を進めてきました。
1−3:
 児童ポルノの被害者については、例えば、親によって被害にあった場合は、児童相談所において一時保護をするなど、個々の事案ごとに必要な保護のための措置を適切に講じることになっています。
1−4:
 本年、与党でとりまとめ、国会に提出した「児童ポルノ禁止法」改正案では、検討事項として、政府に対して、児童ポルノに類する漫画等(漫画、アニメ、CG、擬似児童ポルノ等)と児童の権利を侵害する行為との関連性に関する調査研究を推進するように規定し、この法律の施行後3年を目処として、その調査研究の状況等を勘案しつつ検討し、その結果に基づく必要な措置を講じることとします。
1−5:
 1−4と同じ
2−1:
 どのような場合であっても冤罪はあってはならないものです。また、「児童ポルノ」の定義については、現行の「児童ポルノ禁止法」に規定されているとともに、判例等でも明確になるなど現行法上で不都合はないと考えています。
2−2:
 1−4と同じ
2−3:
 1−4と同じ

(中略)

3−3:
D 子どもたちを守るため、そして人道、人権擁護のためとの本来の目的に立ち児童ポルノの氾濫を阻止しようと、与党で「児童ポルノ禁止法」改正案をとりまとめ、国会に提出しました。
 その中で、児童ポルノに係わる行為の実情、児童の権利の擁護に関する国際的動向等にかんがみ、児童ポルノをみだりに所持すること等を禁止するとともに、自己の性的好奇心を満たす目的での児童ポルノの所持等を処罰する罰則を設けました。
 公明党は改正案の早期成立を図りたいと考えています。
3−4:
 C 与党でとりまとめ、国会に提出した「児童ポルノ禁止法」改正案には、国民の権利を不当に侵害しないように、児童に対する性的搾取及び性的虐待から児童を保護しその権利を擁護するとの本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用するような事があってはならないと既定しています。
 改正案の成立後は、この規定に従って厳格に運用すべきと考えます。

http://cjhjkangaeru.web.fc2.com/organize/question/koumei.html

さて、党として最大の規制推進派と目されている公明党の見解ですが、

1−2は答えが噛み合っていませんね… 子供の人権を守れるか?と聞いているのに、議論を進めてきましたと答えています。

1−4では、今提出されている法案に書いてあるとおり、調査研究を経て

3年をめどに、ユニセフ協会が言うところの「準児童ポルノ」規制するかを

検討していくと回答しています。

なお、1−5、2−2、2−3は1−4の回答をもってその質問の回答としています。

3−3では、今提出されている改定案の早期成立を図りたいという考えを示しています。

いずれにせよ、公明党が政党の中では規制推進の筆頭であるという事実は動きませんね。

自民党が無回答ということから、曖昧な解釈の余地がありますが、公明党には一切ありませんからね。


ともかく、これで規制推進派が支持すべき政党は決まりです。

表現規制創作物規制に賛成する皆さんは、公明党を支持すべきだという結論になってしまいますね。



表現規制推進の黒幕は公明党創価学会だ!!」とアジることによって、

創価学会有識者らを取り込むことができるのかと考えているぐらいですからね…

事実、ネット上の規制反対派には反創価学会の人が少なくないですからね…



さて、自民党社民党が無回答だった理由の推察などについては、

長くなりますので、次回の記事に載せたいと思いますので、後ほどご覧になってください。

アンケートを主宰した市民団体によれば、

「積極果敢に児童ポルノ法の成立にあたった自民党の回答が無かったのははなはだ遺憾」

とのことですが、私の見解はその市民団体とは異なると思いますので、

その詳細について説明したいと思います。