id:ikieさんへ
id:ikieさんが宮台真司氏の本を紹介していたので、質問したところ、
私と宮台と児ポ
id:slpolientさんから
の記事についてどう思うかという質問をいただいたので軽くお答えしておこうと思います。
ただ、最初に断っておくと若干slpolientさんの質問の真意が判り兼ねております。恐らくは純粋に私がどう思うかではなく、宮台真司の意図をどう解釈するのかということなのでしょうが、私は宮台厨では無いですし、無精者なので宮台真司の著作は持ってはいるのですが、全部に目を通した訳でもないです。
http://d.hatena.ne.jp/ikie/20090521/1242840648
とレスが返ってきました。
私の質問の意図は、id:ikieさんが宮台氏のその発言の意図をどう解釈しているのかを
聞いてみたいと思ったというものです。
そこで、私がikieさんに質問した記事について引用します。
8日、TBSラジオの番組「荒川強啓デイ・キャッチ!」に出演した、首都大学東京教授の宮台真司さんの発言が波紋を呼んでいる。宮台さんといえば、以前から児童ポルノ法による規制の強化に反対する識者の一人だったが、発言内容から「規制推進に回ったのではないか」と指摘されているのだ。
発言があったのは、番組内のニュース解説のコーナーで(こちらもネット上では話題になっている)「日本の性暴力ゲームが、欧米から批判されている」とする話題の中で、絵や漫画に関して「明らかに未成年を対象にしているかどうかっていうのは、例えば中学校や小学校が出てくるとか、制服を着ているとか、そういうところで判断できる訳だから、そういうものについてはね、やはり僕は規制した方がいいと思います。そういう意味ではね。明らかに未成年であるという事が分かるシグナルが含まれたマンガはいけない、という様な事ですよね。ただ警察が勝手にキャラクターを見て、うーんこれは大人の服装を着ているが、顔が14歳だとか言ってですね規制されるようであっては困りますね」と解説した。
早速、宮台さんに発言の真意を聞いてみたところ、基本的には発言したことがすべてで、明らかに未成年だとわかるシグナルが含まれるものまでは「守りきれない」と話す。このことは、どう判断すべきだろうか。
一部では「宮台は規制派に転向した」と見る向きもあるようだけれども、それは早急だろう。
現にアダルトゲームでは、自主審査の枠内で明らかに児童を扱っているものはNGとしている。社会がそこまでの表現を容認しているとは考えないからだ。少なくとも、現在の日本で大多数の人々は、明らかに児童に見えるキャラクターが強姦されているような描写を好んではいない。もし、そうした表現を必要とするのならば、断固とやり抜く覚悟を持たなければならないのだろうけど、そこまで考えている人の存在はあまり聞かない。
http://www.mangaronsoh.com/archives/231010.html
「ネット上では話題になっている」と言うのに、私は『マンガ論争勃発』ブログの
昼間たかし氏の記事で初めて知りました。Youtubeやニコニコ動画をチェックしましたが、
それらしき物のアップは確認できませんでした。(削除されたのかも)
はてなブックマークで「宮台真司」を含む新着エントリーを見ても
そんなに話題にはなっていないような気がしましたが…
確かに、昼間氏の記事を見る限りでは一見、宮台氏が規制賛成派に転向したように取れます。
(少なくとも、規制を積極的に推進するという程度のものではない)
ブックマークで、革命的非モテ同盟のid:furukatsuさんが
連中の政治的圧力で切り崩されていく
http://b.hatena.ne.jp/entry/http://www.mangaronsoh.com/archives/231010.html
と嘆き、id:Meat_eating_orchidさんが
界の自主規制でさえ問題なのに……。ついに宮台も転んだか。
http://b.hatena.ne.jp/entry/http://www.mangaronsoh.com/archives/231010.html
と呆れかえる一方、反規制運動家のid:kamayanさんが
「宮台先生をばかり頼りにして、我々自身が売名することを怠ってきたので申し訳ない限り。逆にもっと宮台先生を頼るべきという戦略も可。 」
http://b.hatena.ne.jp/entry/http://www.mangaronsoh.com/archives/231010.html
とコメントしています。これらのことを考慮に入れると、宮台発言には二つの解釈が
あるようです。一つは、宮台氏が規制賛成派に転向したとするもの。そしてもう一つが
宮台氏は転向したかはわからない、あるいは転向していないというものです。
私も宮台氏本人に問い質したわけではないですし、そこで紹介されている宮台氏の
発言そのものが実際にラジオ番組で放送されたものかも分かりません。*1
明らかに未成年と分かるものといっても、範囲は広いですからね。
成人向けゲームならまだしも、一般の漫画でも明らかな未成年の性描写はあると思いますが
宮台氏はそういうものも「守りきれない」というつもりなのでしょうか…
性描写といっても、必ずしも問題になっているゲームのような性暴力的な内容ではないですし、
ゲームならまだしも、漫画では18歳未満の登場人物に性的な行為をさせてはいけないという
自主規制があるという話も一切聞いたことはありません。
ですから、私は宮台氏が転向したと断言はできないものの、その疑念はぬぐいきれないのです。
あ、実は宮台氏は以前からそのような考えだったという仮説は成り立たないのでしょうか…
さて、宮台真司が規制反対派から規制推進派に転向したということですが、リンク先の記述を読む限りはそんなこと書いてない様に思われます。
私が思うに、宮台の真意は「明らかに未成年とわかるもの」の為に「子供ふうキャラ」までが規制される、つまり、一部の黒によって周りの灰色まで規制されることは避けるべきだということでは無いでしょうか。
さて、宮台氏の意図がikieさんの見解どおりであれば、私も宮台氏が
規制賛成派に転向したのではないかという疑念を持つことはないのですが…
もし、宮台氏が規制すべきといっているのであれば、どういう形で規制するのか
その文章を見る限りでは分かりません。
「法規制」をすべきというのであれば、私は反対しますし、宮台氏が転向したという
解釈も正しいのだと推測できますが、もう一つの解釈があって、
「自主規制」を強化すべきだという意味で宮台氏が発言したのであれば、
私は賛成します。私は例のゲームのような性暴力ゲームがこの世から無くなっても
困りませんし、性暴力ゲームが無くなることで性犯罪が増えることも無いと思うんです。
ikieさんは宮台氏は自主規制を強化して「明らかに未成年とわかるもの」を
規制すべきだといっていると解釈したわけではないですよね…
法的規制を回避するために自主規制を強化すべきだという意味で
宮台氏は発言したのだと私は信じたいのですが…
あと、もう一言。
私は、「明らかに未成年とわかるもの」は社会が拒絶していると考えます。なぜならば「明らかに未成年とわかるもの」は社会にとってリスク(不安要素)になるからです。もちろん私たちには「表現の自由」有るのかもしれない。しかし、無制限の自由は人々を不安に陥れます。(ここら辺は大澤真幸著『不可能性の時代』の「リスク社会再論」をお読みくださいまし。)なので、私たち(の集合としての社会)は「明らかに未成年とわかるもの」をモラルで規制して不安を排除しようとするのです。
これに対抗しうるロジックを立てて、戦い抜くことの困難性は容易に想像できます。ならば、私は最初の宮台の転向(?)の様に妥協しても良いと思うのです。
確かに明らかに未成年とわかる登場人物が性暴力を受ける描写は社会が拒絶していますね。
規制推進派の論理として、「明らかに未成年とわかるもの」をモラルで規制して
不安を排除するというのは分かりますが、
実際に規制推進派が規制すべきと主張しているものは、
「18歳未満に見えるすべてのもの」ですよ!!
「準児童ポルノ」という規制推進派の用語の定義は、
被写体が実在するか否かを問わず、18歳未満の児童の性的な姿態や虐待などを写実的に描写したもので、
アニメ、漫画、ゲームソフトおよび18歳以上の人物が児童を演じる場合もこれに含むそうですから、
18歳未満だけでなく、18歳未満に見える成人も規制対象になっているんですよ!!
そもそも架空の人物は生身の人間より年齢が低く見えますからね!!
規制の対象になりうるものはikieさんのお考え以上に広範囲なんですよ!!
それでも、妥協しても良いとおっしゃるのでしょうか?
私には宮台氏の真意は全く分かりませんが、
id:ikieさんは少々楽観的すぎるとだけは認識いたしました。
境界線をつけられないものに無理やり境界線を作ることの問題点について、
もう少し申し上げたいこともあります。
なので、今後、一緒にお話しして意見を交換できたらと思います。
それでは、またの機会に…
*1:こういった内容のものは伝言ゲームで無意識のうちに曲げられてしまうおそれがある