朝日新聞の問題記事、「扇動社会」

4月30日の朝日新聞朝刊にこんな記事がありました。

私も覚醒したのだと思う。
外国人参政権などに反対するメールをワンクリックで300通も一斉送信。
仲間10人と合わせて、1カ月で4万通がネットに放たれる。
「ミステリアスな存在でいたい」。ネットでは「しーたろう」と名乗る。
都内在住の女性だが、氏名も年齢も明かさない。
「今やっていることは、自分じゃなく、日本のため。充実した毎日です」
ブログには、外国人参政権や選択的夫婦別姓などに反対する請願書や意見書の文例が並ぶ。
「日本が解体される」と彼女が危機感を持つテーマだ。
一般、ミセス、ナイスミドル、未成年……。使ってもらいやすいように様々な文体を準備する。
1月の東京都議補選向けの文例もつくった。
ネットで転載が繰り返されて広がり、選挙区の伊豆・小笠原諸島に集中した。
文例ひとつを約2時間で仕上げる。
「みなさんが請願書を出すハードルを低くできれば、と思っている」
 
政治に関心はなかった。
変わったのは昨年の総選挙前。
ネットで、出所不明の民主党「裏マニフェスト」と称する文書を目にした。
「移民一千万人受け入れ」や「国家主権の委譲」などが盛り込まれていた。
あせりが募り、近所に民主党批判のビラを配ったが手応えはなかった。
だが、政権交代の後、自分のブログを立ち上げると、アクセスが集中した。
ふだんはネットでニュースをチェックする。
記事につけられた読者のコメントで、ニュースの裏側の「真実」が分かると感じる。
「マスメディアは本当のことを伝えない」
3月、新たな意見書の文例をつくった。ブログの読者からの提案に応じた。
《いくらでも拡大解釈が可能》《日本の文化・経済が破壊される》
性描写が含まれたマンガやアニメの青少年への販売・閲覧を規制する、東京都の条例改正案に反対する内容だ。
非実在青少年」。耳慣れない言葉で作品の登場人物をくくった改正案への警戒感がネットで渦巻いていた。
読者から都議127人の大半のメールアドレスやファクス番号が彼女に集まった。
最大会派の民主党は、賛否が割れていた。都連幹部の事務所には、3月中旬から1カ月で1千通近くの郵便物が届いた。電話は鳴り続け、1日約700通のメールが届いた日もあった。
都議会事務局にも5千件以上の反対意見が届いた。
可決目前だった改正案は継続審議になった。
「文例を提供しただけ。改正案の中身はよくわからない」。彼女は今、そう語る。
 
ネット上で反対派のよりどころとなったのは、評論家の藤本由香里・明治大准教授の日記だ。
改正案の欠陥を指摘した内容に、1日約2万件のアクセスがあり、広く引用された。
「単純所持も禁止されています」という誤った記述も同時に広がった。
藤本氏は「都の説明不足。表現の自由が縛られる、と大勢の人が気づき、声を届けたことは良かった」と話す。
条文があいまいだ、との批判に対し、都青少年・治安対策本部は26日、内容を説明する回答集をネットに載せた。
規制の対象を「いわゆる『エロ漫画』のうち、子供との性行為の描写がメインとなっているもの」と明記。
対象とならないシーンも掲げた。
「しずかちゃんの入浴シーン」(ドラえもん)、「ワカメちゃんのパンチラシーン」(サザエさん)……。
都の動きは、ブログやツイッターにたちまち取り上げられた。
《お役人の好みで線引きされる》《油断は禁物》。増幅された疑念は消えない。
 
2010.4.30朝日新聞・朝刊
意見も誤解も一斉拡散/「扇動社会」(2)

なお、この記事は朝日新聞のサイトからは見られません。

これは29日から5回に分けて組まれた「扇動社会」という特集記事の1つです。

赤報隊事件を機に時代の言論状況を見てきた企画といいますが、

ネット批判色の濃い内容になっているようです。


ちなみに、29日の第1回では外国人参政権反対運動について取り上げられました。

離島に1日千通以上のメールが殺到したことや、在特会*1対馬での活動、

水間政憲氏のインタビューを取り上げ、外国人参政権反対運動を

「扇動」としてくくっている内容でした。


どうも、ネットによる拡散活動を「扇動」と位置付けた特集のようです。


さて、この記事の何が問題視されているかと言うと、まず第一に

「規制反対派=ネット右翼」、「オタク=ネット右翼

と受け取られかねないところだと思います。

同人誌即売会(29日、江東区と書かれていることから、COMIC1だと分かる)の写真*2

載せていることからも、その手の印象操作と受け取られてしまうでしょう。


Twitterで最初に取り上げた人が最初に取り上げたのはこの点で、

「外国人排撃主義者のブロガーの狂信的活動と都条例問題を一緒にしている」と批判しました。

外国人参政権反対の活動として、仲間10人と月4万通のメールを送るというのは、

一般人から見れば常識とかけ離れていると思いますがね…


規制反対運動の最前線に立っているのは藤本由香里氏やコンテンツ文化研究会だと思いますが、

反対意見が東京都や都議会議員に殺到した原動力の一つに、

ネトウヨ的な抗議活動があったのは間違いないと思います。


その藤本由香里氏の話も載っており、

「「単純所持も禁止されています」という誤った記述も同時に広がった。」

という非常に大きな語弊がある文とともに書かれており、

さも藤本氏がミスリードしているかのように書かれています。

藤本氏はこの記事に対して、抗議したそうです。


確かに、「非実在青少年」がらみの物が単純所持禁止の対象であるというのは誤りですが、

罰則なしとはいえ、児童ポルノの単純所持禁止が条例に盛り込まれているわけですからね。

私は、都条例反対論にもいくつかの誤解があるのは事実だと思いますが、

東京都側の反論は到底納得いくものではないものがほとんどだと思います。


なお、詳細な藤本氏のTwitter上での発言は、「朝日が藤本由香里さんをアサヒる」をご参考願います。



この記事に関しては保坂展人氏も次のように批判しています。

@honeyhoney13 藤本由香里さん。今朝の朝日新聞の記事は、「ネットによる拡散」をテーマとして「単純所持」についての藤本さんの記述を選択的に取り上げていた点で問題があると思いました。もし、藤本さんに児童ポルノ禁止法改正案と都条例についての認識の錯誤があったとしてもです。

@honeyhoney13 藤本由香里さんの都条例への危惧、また「表現の自由」への危機感を伝えないで、一部分の表記をとらえて「煽動社会」とするのは朝日新聞阪神支局襲撃事件を忘れないという趣旨のこのコラムの性格を歪めてしまうものだと思う。都条例と表現の自由について見解を記すべき。

保坂さん、まことにおっしゃるとおりですよ。

朝日新聞阪神支局襲撃事件言論の自由に対するテロリズムに他ならないのですから、

その事件を引き合いに出すのであれば、言論の自由表現の自由を重視する必要があります。

しかし、この記事を見る限りではこんな様子は感じられません!!

本当にひどい記事です。


この記事に関して、「アカヒの偏向記事」などという短絡的な見方も出てくるとは

思いますが、それには賛同できません。

いずれにせよ、新聞、特にリベラル系と目されている朝日新聞

このような表現の自由を軽んじる記事を作るのはおかしいとおもいます。

以前、規制慎重寄りの記事も載っていたのですからね…

*1:記事本文では具体的な名前は出ていない

*2:ちなみに、バックに映っている「若い女性キャラクター」は「魔法少女リリカルなのは」のものと思われる。